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3月13日 大阪大空襲の話 (過去記事)

3月13日 大阪大空襲の話 (過去記事)

僕のおとーさんの思い出話。の、さわり。
結構いい加減な事とかあっても困るのでフィクションとして。

昭和2年生まれのおとーさんは、大阪市九条のタバコ屋の息子。長男。
兄弟の数は6人ぐらい(僕が詳しい数を覚えてない。幼い時にお亡くなりになった兄弟もいる)
おばーちゃんとお母さんと兄弟でたばこ屋を商いして暮らしてた。
青春時代の全ては、日本という国が戦争とは切っても切れない状況にあった時代。
終戦のときは18歳。体が弱く、戦時中の大変な中、病気で高校(当時で言う中学か)を中退
した。
体が弱くて中退したけど、寝てられない状況。電気科やったから、三菱関連の工場で電気関
係の仕事についてた。らしい。

僕は、小さい時からおとーさんの昔話がすきやった。
桃太郎とか一寸法師とかやなかった。
ゼロ戦がめっちゃ強い話。そこから負けて行く話。世界最強の戦艦大和の話。でも最後は沖
縄へ特攻する話。真珠湾攻撃。ミッドウェー海戦。大阪大空襲で散々な目にあったけどなん
とか逃げ切れた話し。そして、その時代の心情、を良く聞いた。

おとーさんの心情を聞いて育った僕は、小学校や中学校で習う「日本が起こした侵略戦争」
「帝国主義」を匂わせる歴史の授業に、ちっともピンと来なかった。
唯一「原爆はあかん」と言う事を徹底して教えられた事は幸運やった。
日本が良いなんてソラおもわへんけど「アメリカもあかんやろ!!」ってなんで言われへん
ねん!!とズーーット思ってた。
テストの問題もここら辺は殆んど出題されなかったように思う。



そんなおとーさんに、僕が小さい頃、素直にした質問。
「おとーさんの周りの人は、みんな最後まで戦争に勝つと思っとったんか?」

おとーさん:
「そらな、始めはラジオも新聞も勝った勝ったで景気のええ話ばっかりするんや。
こらいけるで。となりますわな。ところがや、結局は爆弾落され出しても景気ええ話する。
爆弾落されても勝ってると思える?思えるわけないよ。
家はタバコ屋やし、雑貨も売っとった。商売してたら戦争の具合が、ええか悪いか判らん訳
無いよ。ずっと配給制度でな配給・・。
(厳密に言うと配給制度は全ての商品ではない。また無料で配る訳では無い。この頃のたば
こ屋は平時には、本当は結構もうかる筈の業種だったらしい)
でもな、角のおっちゃんは、いつもニコニコしてこう話しよった。「大丈夫やタバコ屋さん
!連合艦隊がおるんやからな。近くに来たら一網打尽や!」って。
少なくともワシはそんな風には思われへんかった。

だいぶん経って。
いよいよヤバイんちやうか?と思った時や(多分だが3月10日の東京大空襲の後)
「タバコ屋さん。いよいよやで、神風がバーと吹いて、アメリカの戦艦が全部ひっくり返り
よるで」
(この時点で、すでに連合艦隊が決戦を行う。と言う夢すら無くなってる。もちろん東京大
空襲もしっている筈)
と言ってはった。ホンマ、どうやったらそんな事信じられるんかな?って、不思議な思いや
った。
まあ、でもそんな「日本が勝つ」って言うて来る人は、あのおっちゃんぐらいやったかな。
途中からな、みんな、ホンマはヤバイ。負けるんや。って思ってたんや。
あのおっちゃんかって、ホンマは負けるって思ってたかも知れへんな・・・・。
負けるんやって、負けたらどうなんのか。想像も出来へんし。

たばこ屋の前にはな、チンチン電車の線路が走ってたんや。線路見ながらな、よー話しては
った。みーんな大変やった。おっちゃんものんきに暮らしとった訳と違うで。オカシな人や
った訳や無いで。
もしかしたら「勝てる」って言うて、若いワシを励ましてくれてたんかも知れへんな。

でもね。
あの日。

あの夜にな、勝つとか負けるとか、ほんまに全部ふっとんだんや。」

おとーさんは静かに話すのを止めました。



【魔王達が目指した者】

劇場でも酒場でも女遊びでも、何でも楽しめる、天下の歓楽街だった、大阪九条の町並み。
灯火管制の中の町並み。
暗闇。
3日前には東京の町が火の海になっていた。
みんな知っていた。
みんな恐れていた。

昭和20年3月13日11時20分を過ぎた頃。

灯火管制の暗闇と静寂が突然打ち破られる。
ラジオが空襲警報の放送を繰り返す。
暗闇の町にサイレンが鳴り響く。

湧き出す様に逃げ惑う人々。
狭い通りも。
大通りも。
溢れる。
沸き立つ。
防空壕へ。
運河へ。

夜空に幾条ものサーチライト。
その空に映し出される。
映し出される程の高さなのだ。

低高度で進入してくる白銀の魔王達。
B-29数百の群れ。
投弾レバーを握る幾百もの手。
照準器のグラスを覗く幾百もの目。
そこには軍需工場も滑走路も岸壁も映っていない。

作戦目標:一般家屋の破壊と延焼。
投下目標:一般家屋。

投下目標:チンチン電車の線路前のたばこ屋と角のおっちゃんの家。

投下目標:おとーさんやおばーちゃん、兄弟達、そして角のおっちゃん。



17歳のおとーさんがその夜の投下目標だった。
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