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おとーさんの話3。幕末編。

おとーさんから聞いたおもろい話がある。

おとーさんが関西工業学校在学時代。現在の大阪工業大学付属高校にあたる。(病気のために中退)
国史に40歳代の先生がいた。
広島高等師範学校を出た方らしい。
その先生が、昭和初期まで生きていた大大先輩から、面白い話を聞いていた。
国史の先生らしく、その「語り継ぎたい話」を、おとーさん達学生にしてくれた事があったらしい。
「歴史にはのっとらんからな」と言われ話し出された。

その話とは。

維新前の江戸。
安政5年(1858年)頃だと思われる。

その青年は、お玉が池にある北辰一刀流、玄武館を目指して走っていた。
他流試合を見に行く為だった。


最近の他流試合は、道場破りや剣術修業の類では無い本当の試合だ。
黒船以降、一向に落ち着かない空気の中、刀に光が戻り始める様に、大いに盛んに成っていた。
どんなに道場の壁に遮られても江戸の人々は絶対見逃さない。
各々の道場の勝敗は、野次馬達が、それこそ尾ひれ背びれをつけてその日中に江戸中にふれ回る。
各道場の名誉がしっかりかかっていた。
今日の試合場は北辰一刀流の玄武館だ。
元は勢力拡大に他流試合を繰り返し名を挙げた流派。時流合致セリ。
そして、必ずあの剣客が出て来る筈だ。

思い出してもゾクリとする。
今年10月、桃井春蔵の士学館。
「位は桃井、技は千葉、力は斎藤」の全部が揃った交流試合。
売られた勝負は必ず買う神道無念流から、入門1年で練兵館塾頭になった長州藩士、桂小五郎が参加。
必ずや名を残す剣豪になるだろう、長躯上段からの技と気合いで連戦連勝劇をくり広げた。
桂の強さに見物人の熱気最高潮の中、千葉道場の方々から一人の名前が呼ばれた。
そしてあの剣客は堂々と現れたのだ。
北辰一刀流、土佐藩士、坂本竜馬。

双方長躯、上段対正眼。
双方互角の勝負が10本まで続く。いよいよの11本目。
ジリジリト間合が行き交う。
桂、動く。
火の出るような気合いから一閃上段をおろす。
正眼の坂本、同時に稲妻の如き鉄砲付き。
とうとう勝負が決した。
坂本竜馬一本。

野次馬も道場中も、全ての人から一斉に歓声が上がった。爆発した。
震える様な見事な勝負だった。

玄武館は、あの剣客の城なのだ。必ず坂本竜馬が出て来る。


到着すると壁と言う壁には既にわんさの人だかり。
道場内には初めから入れんものの、庭を覗くのも一苦労だ。
広い庭の中央あたり、既に木剣を持った二人の剣客がいる。

一人は、長身の悠々としたしぐさ。やわらかな笑顔。やはりあの剣客。坂本竜馬。
そして、もう一人は。
坂本よりは背は低い。がっしりとした体躯。腕がでかく太く感じる。始終笑わない。
ドンとした二本の足は、根をはったように動かない。
「あれは誰かな」と横のおじさんに聞く。
「あれは試衛館の近藤よ。天然理心流の4代目になる男よ。まあ見てな、ちょっと面白いぜ」


これが、後の維新回転の代名詞、坂本竜馬と、泣く子も黙る壬生狼、新撰組局長、近藤勇の唯一回の手合わせであった。


いよいよ試合が始まる。
すっと蹲踞の構えから二人が立ち上がる。
坂本は正眼の構え。
近藤は・・・。
近藤は中段に構えた切っ先が斜め下を向く。
その異様な形、異様であるが故の凄み。
永倉が、藤堂が、自流の門を出てまで取り入れようとし、認め抜いた実戦剣術。
「ウオリャアーーー」
近藤が、その体躯からは想像も出来ない、甲高く他を圧倒する気合いを発する。

数瞬の呼吸の後、二人の木剣が交差した。

続く(笑)


なんじゃそりゃ。


※1 桂小五郎と坂本竜馬の一戦に関しては他にも記録があり。坂本が奇襲の片手上段で桂を惑わしたが、戸惑いを解消した桂が結局勝った。
と言うものがある。
どちらにしても、10月に試合を行っているのは半平太の手紙等からも確かである。

※2 試合が庭か道場内かは不明。そんな広い庭があったのか知りませんが、カッコいいから庭。


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